ワイン劣化のリスク「ブショネ」とは？

皆さんは、ワインを開けた際に、カビ臭い匂いを嗅いだことはありませんか？それは、ワインの劣化現象の一つである「ブショネ」の可能性があります。
ブショネとは、コルク栓に潜む細菌がTCA（トリクロロアニソール）という物質を生成することで、ワインにカビ臭い匂いを与えてしまうことを言います。TCAは、コルクの漂白に用いられる薬剤や、殺虫剤の成分が変化して発生すると考えられていました。
しかし、これらの薬剤の使用をとりやめたにもかかわらず、ブショネは根絶されていません。現在では、天然素材であるコルクからブショネを完全に防ぐことは不可能であると考えられており、プラスチック製コルクや、金属製スクリューキャップなどを用いてブショネを防ぐメーカーも増えてきました。
しかし、ソムリエの華麗な抜栓や、高級ワインの雰囲気を担う一員として天然コルクは必要不可欠なものだと、多くのワインファンに天然コルクは支持されています。
ブショネの匂いを表現する言葉として、「廃墟のよう」、「ダンボールが湿った匂い」、「雑巾」など様々です。カビ臭い匂いが少しでもしたら、注いだワインを数分間放置してみてください。
TCAは時間が経っても残り続けるので、再度香りを嗅いでまだカビ臭いな、と思ったらそれはブショネです。ひどいブショネでとても飲めたものではない！というもの以外は、TCAは人体に無害ですので、料理に使うなどしてもいいかもしれませんね。
ブショネのワインは、せっかく楽しみにしていたのに、残念な気持ちになります。また、高級ワインや、何年も寝かせておいた大切なワインだった場合、金銭的、精神的ダメージも大きいでしょう。そういった場合に備えて、購入前にはしっかりと対応を確認しておきましょう。お店やワインによっては、無償で交換してくれる場合があります。その際には、必ず現物確認が必要なので、ブショネの疑いのあるワインはしっかりと取っておくようにしてください。しかし、多くの場合はブショネの高級ワインの無償交換は厳しいと思ってください。なぜなら、ビンテージが古かったり、そもそもの日本への輸出割り当て量が決まっているなどの理由で、現物が少ない場合がほとんどです。さらに、消費者が納得するまで返品、交換を続けていては販売者やインポーター、生産者はすぐに赤字になってしまいます。こういった状況を理解していただければ、ブショネのリスクもこういうものだ、と納得できると思います。
ワイン劣化の原因は、ブショネ以外にも、保管ミスによる熱劣化や酸化、細菌の混入による腐敗などがあります。そして、劣化したワインは、どれだけ気をつけていてもいずれ必ず遭遇してしまいます。
ワインは生き物のようにボトル内で常に変化し続けています。長期保存に耐え、熟成によって味わいが変化していくお酒は、ブドウを原料としたワインだけです。素晴らしい熟成を遂げるのか、劣化してしまうのか…そんなワインの神秘に想いを馳せてみてください。劣化に対する印象が少しは変わったのではないでしょうか？